マクドナルドは、なぜ外食で一番稼げるのか
- 店の77%はフランチャイズ。その収入は売上の35%だが、粗利の65%を生んでいる。
- 加盟店の売上は会社の売上に入らない。だから利益率が高く見える。チェーン全体の売上で割ると6.0%。
- 1店あたりの売上は吉野家の約2.5倍。大きく売れる店を、加盟店に任せて広げている。
問い:なぜマクドナルドだけ高いのか
No.00で、主な外食チェーン8社の営業利益率を並べた。営業利益率は、売上のうち本業のもうけとして残る割合で、会社の「稼ぐ力」を比べるときに最初に見る数字だ。
8社の多くは3〜7%台に集まっていた。外食は、材料費・人件費・家賃といった費用が売上の大部分を占める商売なので、手元に残る割合はもともと小さい。その中で、マクドナルドだけが 12.8% と飛び抜けていた。2位のスシロー(8.4%)と比べても約1.5倍ある。
同じハンバーガーやポテトを売っているだけに見えるのに、なぜここまで差がつくのか。今回はこの1つの問いを、決算短信の数字で確かめていく。
立てた仮説は3つ
数字を見る前に、「たぶんこうだろう」という仮説を先に置いた。先に答えの候補を決めておくと、決算短信のどこを見ればいいかがはっきりするからだ。
仮説1は「席にしばられない」。マクドナルドには持ち帰りやドライブスルーがある。ファミレスのように席が埋まったら売れなくなる、ということが起きにくい。だから、1つの店で売れる量が大きいのではないか。
仮説2は「メニューが少なく、調理がシンプル」。作るものが決まっていて作業が単純なら、慣れていない人でも早く作れる。材料の種類も少ないので、まとめて安く仕入れられ、余って捨てる分も少ない。だから、人件費や材料費が少なくてすむのではないか。
仮説3は「フランチャイズが多い」。マクドナルドの店の多くは、本部ではなく加盟店(別の会社)が運営している。本部は看板や商品、やり方を貸し、その代わりに加盟店からお金を受け取る。材料費やアルバイトの人件費は加盟店が払うので、本部の手元に多く残るのではないか。
ただ、仮説2には反対の例がある。吉野家もメニューは少なめで、早く出せて、持ち帰りも多い。それでも営業利益率は 3.6% だった。調理がシンプルなだけでは、マクドナルドの高さは説明できない。
売上を「直営」と「フランチャイズ」に分ける
仮説3を確かめるには、マクドナルドの売上のうち、どれだけがフランチャイズから来ているかを知る必要がある。決算短信の損益計算書を見ると、ちょうどよく、売上が2つに分かれて書かれていた。
1つは「直営店舗売上高」。本部が自分で運営する店(直営店)の売上で、お客さんが払ったお金がそのまま会社の売上になる。もう1つは「フランチャイズ収入」。加盟店の売上に応じて受け取るロイヤルティーなどだ。それぞれに原価(売上を得るためにかかった費用)も書かれているので、どちらでどれだけ稼いでいるかを計算できる。
図を見る前に、1つ予想してみてほしい。
お客さんがマクドナルドで1,000円払ったとき、会社の手元に多く残るのはどっち?
それなのに、利益率はフランチャイズのほうがずっと高く見える。なぜそうなるのかを、このあと順番に見ていく。
お客さんが1,000円を払ったときに、お金がどう流れるかを、直営店とフランチャイズ店で比べたのが図1だ。
2025年12月期の決算短信から計算。直営店は、直営店舗売上原価の内訳(材料費37.3%・労務費25.7%・その他25.6%)。フランチャイズは、フランチャイズ収入1,465億円 ÷ フランチャイズ店の売上(約6,185億円)≒23.7%、フランチャイズ収入原価率61.9%。どちらも本部の費用(販売費及び一般管理費)を引く前。
直営店では、お客さんが払った1,000円がすべて会社の売上になる。そこから材料費に373円、アルバイトなどの人件費に257円、そのほかの費用に256円(決算短信に中身の内訳はない)がかかり、会社に残るのは 114円 だ。
フランチャイズ店では、同じ1,000円はまず加盟店の売上になる。材料費や人件費は加盟店が払い、本部が受け取るのは約 237円。本部の側にもこの収入を得るための原価が約147円かかり、残るのは約 90円 になる。
では、マクドナルド全体では、直営とフランチャイズがどんな割合になっているのか。店の数・売上・粗利(売上から原価を引いたもの)の3つで並べたのが図2だ。
店の数は期末(直営705店、フランチャイズ2,320店)。粗利は、直営店舗売上高から直営店舗売上原価を、フランチャイズ収入からフランチャイズ収入原価を引いて計算した。
店の 77% はフランチャイズだった。ところが売上で見ると、フランチャイズ収入は全体の 35% しかない。加盟店の売上そのものではなく、受け取る一部だけが売上になるからだ。
それでも、粗利で見ると逆転する。フランチャイズが 65%、直営店が35%。売上の3分の1ほどのフランチャイズ収入が、稼ぎの3分の2を生んでいる。仮説3の「フランチャイズが多いから稼げる」は、ここで強く裏づけられた。
マクドナルド自身も、この方向に進んでいる。この1年で、直営店113店がフランチャイズ店に切り替わった(反対にフランチャイズから直営に戻ったのは15店)。決算短信には「フランチャイズビジネスの強化・拡大」を進めると書かれている。
チェーン全体で見ると6.0%
図1をもう一度見ると、気になることがある。お客さんの1,000円あたりで比べると、会社に残るのは直営店の114円のほうが、フランチャイズの約90円より多い。それなのに、利益率はフランチャイズのほうがずっと高く見える。
理由は、割り算の「下」に入る売上の数え方にある。直営店は1,000円すべてを売上に数えるが、フランチャイズは約237円しか売上に数えない。残る額が同じくらいでも、割る数が小さければ、答え(利益率)は大きくなる。
そこで、加盟店の売上も含めたチェーン全体の売上で計算し直してみた。決算短信には、直営店とフランチャイズ店を合わせた売上(システムワイドセールス)が 8,886億円 と書かれている。営業利益 532億円 をこれで割ると、6.0% になる。会社の売上で割った12.8%の半分以下で、No.00で見たほかの外食チェーンと同じくらいの水準だ。
つまり、マクドナルドの12.8%は、店そのものの稼ぐ力がほかの会社の2倍あるという意味ではない。フランチャイズという稼ぎ方を選んだ結果、売上が小さく数えられ、利益率が高く出ている部分が大きい。
1店あたりの売上は、吉野家の約2.5倍
では、仮説1の「席にしばられない」はどうか。確かめるには、1つの店でどれだけ売れているかを比べればいい。チェーン全体の売上を店の数で割り、仮説2で反対の例に出した吉野家と並べた。
マクドナルドはシステムワイドセールス8,886億円 ÷ 期末3,025店。吉野家は吉野家セグメントの売上高1,512億円 ÷ 期末1,290店(2026年2月期)。吉野家の店の数にフランチャイズ店が含まれる場合、その店の売上はセグメントの売上に入らないので、1店あたりは小さく出ている可能性がある。
マクドナルドの1店あたりの売上は約 2.9億円、吉野家は約 1.2億円 だった。比べ方に注意は要るが、2倍以上の差がある。仮説1の「1つの店で多く売れる」とは合っている。ただし、それが持ち帰りやドライブスルーのおかげなのか、1回の会計の金額(客単価)が高いからなのかまでは、この数字だけでは分けられない。
1店で大きく売れることは、フランチャイズの仕組みとも関係していそうだ。加盟店は売上の約24%を本部に払っている。それでも加盟店がやっていけるのは、1つの店の売上が大きいからだと考えられる。
仮説2は、この数字では確かめきれない
最後に仮説2。直営店の原価の内訳を見ると、材料費は売上の 37.3%、人件費(労務費)は 25.7% で、合わせて 63.0% だった。外食では、材料費と人件費の合計(FLコスト)を売上の60%くらいに収めるのが目安とよく言われる。それと比べると、マクドナルドの直営店が特に低いわけではない。
ただ、ほかの会社の決算短信には同じ形の内訳が載っておらず、同じ物差しで比べられなかった。ここは「違う」とも「合っている」とも言えず、確かめきれていない。
判定と結論
3つの仮説の判定は、次のとおりになった。
| 仮説 | 判定 | 根拠 |
|---|---|---|
| 3 フランチャイズ | ◎ | 粗利の65%を生む。さらに売上の数え方で利益率を高く見せている |
| 1 席にしばられない | ○ | 1店あたりの売上は吉野家の約2.5倍。理由までは分けられない |
| 2 調理がシンプル | △ | 材料費+人件費は63%。比べる数字が足りない |
マクドナルドの利益率が高い一番の理由は、フランチャイズという稼ぎ方の形だった。店の4分の3を加盟店に任せ、材料費や人件費を負担せずに、加盟店の売上の一部を受け取る。この形が粗利の3分の2を生み、さらに「加盟店の売上は自分の売上に入らない」ことで、利益率が高く見えている。チェーン全体で見れば6.0%で、ほかの外食と同じくらいだ。
そのうえで、1店あたりの売上が大きいことが、この形を支えている。たくさん売れる店だから、加盟店は売上の一部を本部に払ってもやっていけて、本部は店を増やしやすい。吉野家との差も、メニューの作り方より、1店あたりの売上とフランチャイズの大きさで説明しやすい。
ここから学べること
今回いちばん大きかった学びは、利益率を比べる前に、その会社の「売上」に何が入っているかを確かめるということだ。フランチャイズの多い会社は、加盟店の売上を自分の売上に数えないので、利益率が高く出やすい。直営が中心の会社と、営業利益率だけで並べると見誤る。
No.00の「外食の地図」も、この目で見直す必要がありそうだ。ほかの会社も多かれ少なかれフランチャイズ店を持っている。チェーン全体の売上で割った利益率で比べ直すと、順位が変わるかもしれない。
比べるときの注意
- 粗利は、本部の費用(販売費及び一般管理費)を引く前の数字。本部の費用が直営とフランチャイズでどう分かれるかは書かれていない。
- フランチャイズ店の売上は、システムワイドセールスから直営店の売上を引いて出した。
- 1店あたりの売上は、期末の店の数で割った。年の途中で開いた店・閉じた店の分はならしていない。
- 吉野家とは決算期が違う(マクドナルドは2025年12月期、吉野家は2026年2月期)。
自分の理解の穴
- ほかの外食チェーンもフランチャイズ店を持っている。チェーン全体の売上で割った利益率で、8社を比べ直すとどうなるか。
- フランチャイズ収入の原価が 61.9% もある。中身は何か(決算短信には内訳がない)。
- 吉野家の1,290店のうち、フランチャイズ店はどれくらいか。
- 1,000円あたりなら直営店のほうが多く残るのに、なぜフランチャイズを増やしているのか。
この号で出てきた言葉
- フランチャイズ
- 本部が看板・商品・やり方を貸し、加盟店(別の会社)が店を運営する仕組み。加盟店は売上に応じたお金を本部に払う。
- 直営店
- 本部の会社が自分で運営する店。売上も、材料費や人件費も、本部の決算に入る。
- ロイヤルティー
- 加盟店が、看板ややり方を使う代わりに本部へ払うお金。マクドナルドでは加盟店の売上をもとに計算される。
- 粗利(売上総利益)
- 売上から原価を引いたもの。ここから本部の費用を引くと営業利益になる。
- システムワイドセールス
- 直営店とフランチャイズ店を合わせた、チェーン全体の売上。会社の決算の売上とは別の数字。
- FLコスト
- 材料費(Food)と人件費(Labor)の合計。外食で、もうけの体力を見るのによく使われる。
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この記事は、学びながら書いている勉強ノートです。投資の判断に使うものではありません。数字の間違いに気づいたら教えてください。