お金|No.01

ROEって、つまり何?外食8社で比べてみた

2026年11月読む時間 約7分外食8社の決算短信から
3行でいうと
  1. ROE は「株主が預けた100円で、会社が1年に何円の利益を出したか」。
  2. 外食8社では2.6%〜26.9%。営業利益率1位のマクドナルドは、ROE では3位だった。
  3. ROE は「利益率 × 回転率 × 借金の使い方」に分けられる。利益率が同じゼンショーとサイゼリヤの差は、借金の使い方から来ていた。

きっかけ:株価は何を見ているのか

外食No.02で牛丼チェーンを調べていたとき、ゼンショーの本社が「稼ぐ部門」になっていることが気になった。そこから「この稼ぎ方の形は、株価にどう反映されるのか」という疑問が出てきた。

株を持つと、その会社の利益の一部の持ち主になる。だから株価は、ざっくり言えば「この先、どれだけ稼げそうか」と「それがどれくらい確かか」への期待で動く。では、投資する人は会社のどこを見て、それを判断しているのか。よく使われる数字の1つが、今回の ROE だ。

ROE は「株主の100円で何円稼いだか」

ROE は、1年の利益(純利益)を、株主のお金(自己資本)で割った数字だ。決算短信の1ページ目には「自己資本当期純利益率」という名前で、最初から載っている。

言いかえると、株主が会社に預けた100円で、会社が1年に何円の利益を出したか。ROE 10%なら、100円で10円稼いだことになる。銀行の預金の利息と同じように考えると分かりやすい。株は損をすることもあるので、投資する人は預金よりずっと高い増え方を期待する。

日本では、2014年に経済産業省が出した報告書(通称「伊藤レポート」)が、「ROE は最低でも8%を目指すべきだ」と書いたことで、8%がよく目安にされるようになった。

外食8社の ROE

外食No.00で営業利益率を比べた8社について、ROE を並べてみる。その前に1つ予想してほしい。

予想してみよう

営業利益率で1位だったマクドナルド。ROE では8社中、何位?

図1 外食8社の ROE自己資本当期純利益率
スシローFOOD & LIFE COMPANIES
26.9%
すき家・はま寿司ゼンショーHD
15.8%
マクドナルド日本マクドナルドHD
12.7%
ガストすかいらーくHD
9.3%
サイゼリヤ
8.8%
CoCo壱番屋壱番屋
8.0%
吉野家吉野家HD
7.1%
丸亀製麺トリドールHD
2.6%

各社の決算短信1ページ目の「自己資本当期純利益率」(国際会計基準の3社は「親会社所有者帰属持分当期利益率」)。決算期は2025年9月期〜2026年8月期で、会社ごとにちがう。

1位はスシローの会社で 26.9%。株主の100円で、1年に約27円を稼いでいる。2位はゼンショーの 15.8%、3位がマクドナルドの 12.7%。8%の目安を超えているのは6社で、吉野家(7.1%)とトリドール(2.6%)が下回った。

営業利益率の順番とは、かなり入れかわっている。営業利益率で5位(6.4%)だったゼンショーが ROE では2位に上がり、2位(8.4%)だったスシローは飛び抜けて1位になる。本業の利益率だけでは、この並びは説明できない。

ROE を3つに分ける

ROE は、次の3つのかけ算に分けられる。

ROE = 利益率 × 回転率 × 借金の使い方

この3つで8社を分けたのが図2だ。どの会社が、どこで ROE を稼いでいるかが分かる。

図2 ROE を3つに分ける8社・ROE の高い順
会社利益率回転率借金の使い方ROE
スシロー5.3%1.12回4.38倍26.9%
ゼンショー3.6%1.43回3.05倍15.8%
マクドナルド8.1%1.19回1.31倍12.7%
すかいらーく3.7%0.93回2.74倍9.3%
サイゼリヤ3.7%1.55回1.55倍8.8%
壱番屋3.9%1.38回1.47倍8.0%
吉野家2.1%1.85回1.85倍7.1%
トリドール0.8%0.88回3.52倍2.6%

各社の決算短信1ページ目から計算。利益率=親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 売上。回転率=売上 ÷ 総資産(期首と期末の平均)。借金の使い方=総資産の平均 ÷ 自己資本の平均。3つをかけると、決算短信の ROE とほぼ同じになる(スシローは計算すると26.3%で、少しずれる)。

3つに分けると、ROE の高い会社でも、高い理由がまったくちがう。

ここでもう1つ予想してみてほしい。

予想してみよう

ゼンショーとサイゼリヤは、純利益率がほぼ同じ(3.6〜3.7%)。なのに ROE は15.8%と8.8%。差をつけたのはどれ?

自己資本比率とは、逆に動きやすい

「借金の使い方」は、決算短信に載っている 自己資本比率(資産のうち、株主のお金でまかなっている割合)の裏返しだ。自己資本比率が低いほど、借金の使い方の倍率は大きくなる。

図3 自己資本比率と ROE
会社自己資本比率ROE
マクドナルド77.0%12.7%
壱番屋67.0%8.0%
サイゼリヤ64.2%8.8%
吉野家54.5%7.1%
すかいらーく36.2%9.3%
ゼンショー35.5%15.8%
トリドール29.9%2.6%
スシロー24.0%26.9%

自己資本比率の高い順。国際会計基準の3社は「親会社所有者帰属持分比率」。

自己資本比率が一番低いスシロー(24.0%)の ROE が一番高く、自己資本比率が一番高いマクドナルド(77.0%)は、利益率の高さで ROE を出している。ただし、トリドールのように自己資本比率が低くても、利益が小さければ ROE は上がらない。借金は、利益が出ているときにだけ ROE を押し上げる。

ここが ROE の読み方で一番大事なところだと思う。ROE が高いとき、それが「よく稼いでいるから」なのか「借金を多く使っているから」なのかで、意味がまったくちがう。借金で上がった ROE は、売上が落ちたときに返す負担が残るので、そのぶん危なさもある。だから投資する人は、ROE だけでなく、どこで ROE が高くなっているかを見る。

「仕組みを売る形」が好まれやすい理由

この3つの分け方で見ると、マクドナルドのようなフランチャイズ中心の形が投資する人に好かれやすいと言われる理由も分かる。店を建てるお金の多くを加盟店が出すので、少ない元手で稼げる(利益率が高くなる)。しかもロイヤルティーは毎月入ってくるので、利益が読みやすい。借金に頼らずに ROE を出せる形は、「確かさ」の面でも評価されやすい。

ただ、これはリスクがなくなるという意味ではない。加盟店がもうからなくなれば、仕組みごと揺らぐ。リスクの種類が変わるだけだ。

ここから学べること

営業利益率は「本業でどれだけ残るか」、ROE は「株主のお金をどれだけ増やしたか」。同じ「稼ぐ力」でも、見ている場所がちがう。そして ROE は、3つに分けて初めて意味が分かる数字だった。同じ15%でも、利益率で出しているのか、借金で出しているのかで、会社の姿はまったくちがう。

比べるときの注意

自分の理解の穴

この号で出てきた言葉

ROE(自己資本利益率)
1年の純利益 ÷ 株主のお金(自己資本)。株主の100円で、1年に何円の利益を出したか。
自己資本
株主が出したお金と、会社がこれまでにためてきた利益。返す必要のないお金。
自己資本比率
資産全体のうち、自己資本でまかなっている割合。高いほど、つぶれにくいと見られる。
総資産回転率
売上 ÷ 資産。持っている資産で、どれだけの売上を作れたか。
伊藤レポート
2014年に経済産業省が公表した報告書。日本企業に「ROE 8%以上」を求めたことで知られる。
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出典:各社の決算短信(1ページ目の連結経営成績・連結財政状態)… 日本マクドナルドHD 2025年12月期、 FOOD & LIFE COMPANIES 2025年9月期、 壱番屋 2026年2月期、 すかいらーくHD 2025年12月期、 ゼンショーHD 2026年3月期、 サイゼリヤ 2026年8月期、 トリドールHD 2026年3月期、 吉野家HD 2026年2月期。 経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ」(伊藤レポート)最終報告書。
この記事は、学びながら書いている勉強ノートです。投資の判断に使うものではありません。数字の間違いに気づいたら教えてください。