経営とお金は、なにがちがうのか
- 経営は「事業の中身でお金を生むこと」。お金は「そのお金をどこから集め、どこに使い、いくらと値段をつけるか」。
- 決算書の上半分(売上〜営業利益)は経営の成績、下半分(利息、株主のお金、ROE など)はお金の成績。
- 2つはつながっているが、両方を同時に手を動かしてやるのは難しい。だから仕事も、手伝う人・やる人・お金の人に分かれている。
きっかけ:経営とお金は、すごく近い気がする
お金編では、ROE、株と借金、ベンチャーのお金、含み益、会社を買う人たちと見てきた。どれも外食編で読んだ「会社の稼ぎ方」とつながっていて、経営とお金はほとんど同じものに思えてくる。では、2つは何がちがうのか。お金編の最後に、ここを整理しておく。
車でたとえると
ひとことで言うと、経営は事業の中身でお金を生み出すこと、お金(財務・投資)は、生まれたお金をどこから集め、どこに使い、いくらと値段をつけるかだ。
| 経営 | お金 | |
|---|---|---|
| 車でいうと | エンジンをよくして、速く走らせる | 燃料をどこで入れ、どの道を通り、車をいくらで売り買いするか |
| 問い | お客さんは誰? 何を売る? どう作る? 人は? | 株か借金か? どこに投資する? この会社はいくら? |
| お金編では | 外食編のフランチャイズ、本社の費用、材料の値上がり | ROE、株と借金、優先株、含み益、PBR |
決算書の上と下で分かれる
おもしろいことに、ここまで読んできた数字を並べると、決算書の「上」と「下」で、2つがきれいに分かれる。
| 経営の成績 | お金の成績 |
|---|---|
| 売上、営業利益、営業利益率 | 利息など(営業外)、経常利益 |
| 原価率、1店あたりの売上 | 自己資本比率、株と借金の割合 |
| 事業ごとの利益(セグメント) | ROE、配当、自社株買い |
| 営業キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー、株価、PBR |
外食の0〜2号で読んでいたのは、ほとんどが左側だった。お金編で読んできたのは右側だ。そして、左で1番の会社が、右でも1番とは限らない。
営業利益率はマクドナルド12.8%、ゼンショー6.4%。ROE が高いのはどっち?
経営の成績(営業利益率)では半分だったゼンショーが、お金の成績(ROE)では上に来る。お金No.01で見たとおり、借金の使い方のちがいだ。
もちろん、2つは切り離せない。経営がうまくいって利益が出なければ、お金の工夫だけでは長く続かない。逆に、借りすぎや株の渡しすぎのようにお金の使い方を間違えると、経営がよくても会社は苦しくなる。そして お金No.05の PE ファンドは、この2つを両方使う仕事だった。お金で会社を買って、経営で価値を上げる。
仕事も、2つの側に分かれている
経営とお金のそれぞれに、「手伝う人」と「自分でやる人」がいる。並べると、ビジネスの仕事の地図になる。
| 手伝う人 | 自分でやる人 | |
|---|---|---|
| 経営 | 戦略コンサル | 経営者 |
| お金 | 投資銀行 | ファンド(PE、アクティビストなど)、会社の財務の責任者 |
戦略コンサルが「経営の相談に乗る人」なら、投資銀行は「お金の相談に乗る人」だ。どちらも手伝う側で、自分のお金のリスクは負わない。
両方分かることと、両方やること
これだけ結びついているなら、1人で両方の専門家になればいいのでは、とも思う。段階を分けると、できることとできないことが見えてくる。
- 両方「分かる」:できる。むしろ、どちらの仕事をするにも必要。
- 両方で「腕がある」:難しい。どちらも何年もかけて身につく技で、両方で一流になるには時間が足りない。
- 両方を「同時に手を動かす」:ほぼ無理。会社を1社買うときには、値段の計算や借りる交渉(お金)と、買ったあとの計画や社員との話(経営)が、同じ数か月に山ほど重なる。
投資家のウォーレン・バフェットは、事業をする人だから投資がうまくなり、投資をする人だから事業がうまくなった、という意味のことを言っている。両方分かることは、それだけで大きな強みになる。ただ、そのバフェットも、会社の日々の経営はそれぞれの経営者に任せている。一番強いのは、「1つを深く、もう1つも分かる」形なのだと思う。
お金編で学んだこと
お金編の6号をまとめると、こうなる。
- No.01:ROE は「利益率 × 回転率 × 借金の使い方」。3つに分けて初めて意味が分かる。
- No.02:株は失敗したら安く、成功したら高いお金。そのコストは利益の計算に出てこない。
- No.03:お金は成功も失敗も、大きく速くする。集めた額より、条件と「止めても残るか」を見る。
- No.04:帳簿は買ったときの値段でできている。今の値段とのあいだに、ずれが眠っている。
- No.05:会社を買う人たちは、やり方はちがっても、同じ「ずれ」を探している。
外食編で見た「稼ぎ方」が経営の話だとすれば、お金編は、その稼ぎ方に市場がどう値段をつけるかの話だった。次に業界を読むときは、決算書の上半分だけでなく、下半分も一緒に読んでいく。
自分の理解の穴
- 会社の財務の責任者(CFO)は、経営とお金のどちらの仕事をしているのか。
- 外食編で読んだ会社を、お金の側(ROE、PBR、株主への返し方)からもう一度読み直すと何が見えるか。
この号で出てきた言葉
- 財務
- 会社のお金の集め方・使い方・返し方を考えること。
- セルサイド・バイサイド
- セルサイドは、投資銀行など会社や投資家を手伝う側。バイサイドは、ファンドなど自分で投資する側。
- CFO
- 会社のお金まわりの最高責任者。
この記事は、学びながら書いている勉強ノートです。投資の判断に使うものではありません。間違いに気づいたら教えてください。